2013年11月24日日曜日

レクサスRCのFスポ専用シート

  レクサスの良いところは、いい意味で「何でもできる」ところです。豊富な資金力を持つ世界のトヨタのアンテナブランドとして、その気になればフェラーリだろうがポルシェだろうが相手のフィールドで追いつめることができるくらいの自負は持っているのでしょう。だけれども1500万円でフェラーリに匹敵する12気筒ミッドシップを発売したところで、フェラーリにとっては痛くも痒くもないどころか、スーパーカーにより目が向けられるようになり、注文がさらに殺到し余計に手に入りにくくなるだけのようです。

  そしてそんなクルマを作ったところで大赤字が目に見えています。NSXだってヴェイロンだって宣伝費だと考えなければ大赤字でしかないわけです。そんな一発逆転の社運的企画をナンバー1企業のトヨタが率先してやる意味はほとんどないですし、逆にトヨタを追うVW(ヴェイロン)、ホンダ(NSX)、日産(GT-R)にとってはそれなりに意味があることなのでしょうけども・・・。

  カネはあるけどやる事(アイディア)がないといったところでしょうか・・・。それでも 日本からSクラスを追っ払ったし、最高級Cセグハッチバックが世界中でなかなか景気良く売れているし、やる事はしっかりやっています。そして現在遂行中のミッションがDセグのスポーティセダン/クーペ、つまりISとRCをクラス標準の地位に押し上げられるかということで、なかなか細かいところを気にしているようです。

  トヨタもレクサスも業界全体で言えば「最大多数の最大幸福」をモットウとしているので、下手くそが運転してもカックンブレーキにはなりずらく、ブレーキからカスも出にくいし、フロントガラスも汚れにくいし(地味ですがいい素材使ってます)、良い点を挙げればキリがないというくらいです。トヨタに慣れちゃってからVWに乗るとそれなりに違和感が出てきますし、スバルやマツダを上手く走らせるには相当なリハビリが必要になります。しかしやっとマツダに慣れてきた私が久々にトヨタ車に乗ると、これまた不思議で最初から上手くコントロールできてしまいます。

  そんな「素晴らしい」トヨタ車(レクサス車)なのですが、一方では批判もいろいろあるようです。そのほとんどは「錯覚」とか「ボケ」とかの類いだったりするのですが、ややまともな意見を要約するとトヨタ車が素晴らし過ぎて「ダルい」ということのようです。世界のどこよりも安全で快適な日本を「退屈」と言ってしまう人間の愚かな「ルーティン」なんて放っておけばいい気もします。そんなへそ曲がりはポルシェとかアルファロメオでも買って過酷な現実に直面すれば、トヨタの良さも少しは分かるんじゃないでしょうか・・・。

  それでもサービス精神旺盛なトヨタは、素材メーカー(系列ですが)の言い分に素直に従って、なかなか”過酷”なシートを作ってきました。レクサスRCのFスポに標準装備されるシートらしいですが、これがまた見るからに座面が「小さい」のです。なんで高級車なのにコクピットに固めワザを決められながら座らなきゃなんないの?という素朴な疑問がふつふつと湧いてきます。

  どうやらトヨタは86のシートポジションに味をしめたらしく、同じようなドラポジをレクサスに持ち込んでくるようです。ちょっと大げさですがミゾオチにすっぽりハマりそうな位置にハンドルがあって。平和ボケ(失礼!)な皆様にはこういう「オモチャ」にゾクゾク来ちゃうのでしょうか?こんな体勢で500kmを5時間ドライブなんて想像するだけで・・・。よく幹線道路でサイドバイサイドになる86のドライバーの顔が圧迫感で蒼白気味になっていたりしますが、今回はシートは86よりもさらに「オモチャ」感を増していて「拘束具」といっていいかもしれません。

  結局のところ非トヨタ的な要素はどれも「オモチャ」的な要素に通じるのかもしれません。「これがレクサスの新しいシートです!ぜひ座ってみてください!」と言われて、これは80%サイズの"レプリカ"だと思ったので、からかわれているのかと思いましたよ・・・。見た目はちょっと上等なゲームセンターのアーケードマシンです。とりあえず座ってみたら座れないこともないですし、座った印象はというと座面の硬さがさっきまで乗ってたマツダ車と同じくらいで、シートをより小さく見せているサイドのサポートの高さはマツダの比ではなく、その点がまさに「固めワザ」でした。説明によるとウレタン素材だけでサポートを成形している工法が世界初なんだそうです。

  エボX標準のようなレカーロ製の芯のある硬質なハードサポートと比べて、人間工学的に優れたシートのようですが、その結果がやや圧迫感が強い「マツダ」というわけでしょうか? たしかにマツダシートでは、ちょっと峠でやんちゃをするとドライビングポジションは左右に±2cmほどはズルズルいってしまうので、もしかしたらこのレクサスのシートなら!?という期待感はあります。となると肝心なのはレクサスRC(Fスポ)の車重がどれくらいのところに収まるのかは興味深いですね。350と300hで1500kg前後ならば・・・。


  ↓実用車に飽き足らず「オモチャ」まで作り始める完璧主義者です。
 

2013年10月30日水曜日

レクサスに対する「一般的」で大きな誤解

  北米ではレクサスは、他のプレミアムブランドよりも割安な印象があり堅実な成長がみられます。一方で欧州や日本では、メルセデスやBMWと比べてもそれほど割安な印象はなく、一般的には苦戦していると言われています。

  「一般的」って何かというと、産經新聞のネット記事でそのような総括がされていたのを先日たまたま目にしたのですが、どうもレクサスを見る「重大」な視点が欠けている気がしました。レクサスが欧州や日本でブレイクしない理由なんてクルマ好きなら誰でも解っているはずですが、この大手メディアの途中で眠くなるほどの長い記事にはまったく書いてありませんでした。

  メルセデス・BMWとレクサスは何が違うのか? それは簡単に言うと「ワゴンが無い」ことです。欧州ではプライベートカーとしてのセダンのニーズはかなり限定されたものになっています。メルセデスやBMWにしたって本来の姿はワゴンです。日本で見る限りでもメルセデスなどはワゴンの割合が相当に高いのが解ります。

  レクサスは何らかの意図を持って、ワゴンありきの市場にセダン専用モデルばかりを並べています。最初から欧州・日本市場で大きくシェアを取ろうとは考えていないのです。それを何も解ってなさそうな評論家が「レクサスはまだまだ欧州では評価されていない」みたいなことを偉そうに書いています。

  たとえばトヨタのランクルはプリウス以上にトヨタに利益をもたらすグローバルな大ヒット車なのですが(だから盗難が多い)、いくら良いクルマだからといっても製造国でもある日本では、年間販売ベスト30にも入りません。しょうもない例えですが、どんなにいいクルマでもニーズに合わなければ、評価されないのは当たり前のことです。

  それにしてもトヨタは大人です。「レクサス惨敗」みたいな過激なタイトルをぶち上げられても、屁とも思っていません。日本人がこれを読んでどう思おうが知ったことではないようです。日本人がレクサスに乗りたいなら乗ればいいし、ドイツ人だろうがイギリス人だろうがそのスタンスは一緒です。

  結局はアメリカのクルマの商習慣に基づいてトヨタもホンダも日産もプレミアムブランドを作っているだけです。アメリカの中流以上の人々にとってはトヨタブランドではなにかと都合が悪いのです。アメリカにはピックアップトラックと最近ではSUVが人気で、ワゴンの需要なんてほとんどありません。よってワゴンを作る必要なんてないのです。

  レクサスが日本にきた2005年の時点で発売されていたクルマは、いずれもアメリカ向けの味付けで、ハンドリングやブレーキはかなり緩く、エンジンも今より大排気量のものが多かったです。その後トヨタは北米市場のトレンドの変化を睨み(予期して)、ハイブリッドをレクサスへ大量に投入しました。そこで登場したLS600hやGS450hは、どう考えても日本市場を視野にいれたハイブリッドにはとても思えないはずです。日本では「オーバースペック」で欧州では「不人気」の烙印を押されたレクサスのハイブリッドですが、北米ではしっかりウケました。

  GMやBMWなどは慌てて高級車向けハイブリッドを開発してレクサスを追従しましたが、レクサスの技術力の前に完敗しました。その後トヨタの読み通り、北米でもハイブリッドの普及が急速に進みました。レクサスは決して日本のトレンドとしてハイブリッドを実験的に北米に持ち込んだわけではありません。北米の市場を予測した上で確信的に投入しています。

  そしてまた、世界一優秀なトヨタのマーケティングリサーチによりレクサスはブランドとして新たなシステムを投入しました。それが現行GSとISに使われている「スポーティセダン」の頂点を目指す新型シャシーです。欧州や日本では「カッコ良さ」と「低燃費」を追求して小型車へとトレンドが移行していますが、北米ではセダン=高級車という本質をクルマの基本性能の高さで追求する動きが出てきました。

  シボレー・カマーロやダッジ・チャージャーのように、スーパースポーツカー並みの出力を誇る「マッスルカー」というニーズは昔からありましたが、それとは別に「BMW vs ホンダ」という中型スポーツセダンの争いに、日産が名乗りを上げ、そこにヒュンダイが追撃するという新たな「プレミアム・スポーツセダン」が盛り上がっています。「キャデラック」「ダッジ」「リンカーン」の3ブランドもビッグ3の「代理戦争」としてこのジャンルへと意欲的な姿勢を見せています。

  レクサスも当然ながら戦略上この競争に勝利する必要がありました。そこでトヨタの威信を懸けて、新型の「決定的」とも言えるシャシーを開発してきました。まだまだ経年も浅い部分がありますが、確実にトップクラスの実力があることは間違いないです。しかし、いまだにBMWやメルセデス的な視野でこのGSやISをこき下ろす評論家もいるようです・・・。どういう客観的なデータを持ってきても、レクサスがメルセデスやBMWに劣っている事実なんてないのですが・・・。


2013年10月17日木曜日

レクサスRCを「BMW4の後追い」とせせら笑う人々・・・

  レクサスRCがBMW4シリーズの完全なるパクリという「見解」がもはや「常識」のように語られてしまっています・・・。このクルマ(レクサスRC)に期待する人々にとっては少々寂しい思いがすることでしょう。トヨタも意図的にラインアップをドイツメーカーを真似て揃えることで、クルマの位置づけを解りやすくしている点もあるのでしょうけど。

  BMWが「ドライバーズセダン」の進化のために果たした大きな貢献には敬意を表したいと思いますが、今やBMWの魂を感じられるFR6気筒のクルマは新車で買うと最低でも800万円以上します。GT-Rやポルシェケイマンが買えてしまう金額を出しても、搭載されている直6ターボエンジンは完全に時代遅れの「遺物」だったりします。

  5年前の段階で500万円で買える日産スカイラインの3.7L(NA)のエンジンにボロ負けしたユニットを誤魔化して使っています。つまり800万円出しても5年前からアップデートされていない「負け犬」のBMWしか手に入りません。そして日産やトヨタのNAよりいいエンジンに乗りたければ、「M」か「アルピナ」を買えとばかりに踏ん反りかえっています。なんでこんなBMWになってしまったのか、それは彼らが世界中のカーメディアに守られ過ぎているからではないかと思います。

  新型レクサスISが発売されて、いよいよ3シリーズを全面的に上回るクルマへと進化させましたが、カーメディアは意図的な記事を乱発して、BMWを守りました。メディアのBMW保護戦略でもっとも顕著に行われるのが、BMW車の最上級グレードと他車のボトムグレードを意図的にぶつけるものです。欧州車寄りもメディアには絶対に登場しない幻のトヨタ車が「マークX3.5L」「クラウンアスリート3.5L」「レクサスIS350」の3台です。いずれも400~500万円台でBMW3シリと価格的に競合するはずですが、これらを登場させて「トヨタ(レクサス)>BMW」を主張したところで、メディアにとっては熱心な読者が多いBMWファンにそっぽを向かれるだけで何も得をしないからです。

  新たに登場するRCは3.5LのNAがメイングレードになるので、BMW435iの直6ターボよりもおそらく低価格で、気持ち良く回るNAしかも高出力ということで、今度はいかに雑誌メディアでもネガティブキャンペーンは難しいだろうと思います。しかしBMW4シリーズにも不穏な動きがあるようです。M3の歴史を引き継いで登場するM4がいよいよV8エンジンを放棄し、新型のツインターボに組み直した直6ユニットを載せてくるのだとか。

  BMWがその面子を踏みにじった日産に仕返しをするべく開発した「秘蔵っ子」が登場します、3Lツインターボで500ps近い出力を出す、ハイパフォーマンスユニットでその性格はGT-RのV6ツインターボに近いらしいです。日産だけでなく、メルセデスやアウディに対しても立ち後れが目立っていたBMWの待望の新ハイパワーエンジンで復活を印象づけるようです。トヨタもRC-Fをすでに準備していて、従来の5LのV8NAが搭載される見込みですが、ヘタするとM4に足元を掬われてしまうのかもしれません・・・。



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    ↓10月30日発売のBMWERでM4の詳細が載るかも・・・
 

2013年9月13日金曜日

「LF-NX」は無かったことにしてもいいですか?

  あんまりネガティブなことを書くブログではないのですが、今回ばかりは激励の意味を込めて断腸の想いで率直な感想を綴りたいと思います。レクサスの次世代コンパクトSUVである「LF-NX」が公開されました。最近のレクサスは「攻めている」のは重々承知していますが、このLF-NXのデザインに関しては完全に火薬の量を間違えてますよね。あまりの破壊力の凄まじさに、私を含めた傍観者の美的基準では推し量れないだけでなく、頭の中が一瞬真っ白になって、「クルマって何だっけ?」くらいの軽い記憶喪失を引き起こすほどです。

  しばらくして冷静さを取り戻しても、なぜこのデザインがレクサスとして承認されたのか全く理解できません。モリゾー社長自ら陣頭指揮を取って作った結果がこれで、誰も文句を言えなかったのでは?と深読みしてしまいそうです。これほどの「難解」なデザインにはそうそうお目にかかることはないのですが、レクサスが作ったとなればよ〜く考えれば、それなりの「意図」が見えるのではないかと思い、意地になって考えましたがさっぱり納得が行きません。新型ISは見た瞬間に良さが解ったのですが・・・。


  おそらくデザイナーは現代人の脳内を投影しきることで、都市型SUVの隔世感のある近未来デザインへと変換したのではないかと思います。それはどういうことかというと、簡単に言うと「痛車」を作ることです。アニメが描かれる前から、すでに「痛車」くらいのインパクトがあります。しかもブツける前から至る所がボコボコにヘコんでいます。おそらくレクサスのデザイナーの意図は、既存のつまらないデザインへのアンチテーゼをデザインの魅力に組み込んでいます。

  アパレルにくらべて、クルマのデザインはまだまだ保守的です。仮面ライダーがプリントされた靴を喜んで履くのは、本当に小さな子供だけでしょうか? キャラクターがプリントされたT-シャツはもっと広く市民権を得ています。ましてや今や子供以上に大人が漫画を熱心に読む時代です。そうなると「シャア専用オーリス」もごくごく自然な流れなのかもしれません。

  あくまで私の意見ですが、クルマはそれ自体が偉大なカルチャーなので、他のカルチャーに安易に迎合すべきではないと思います。過去の歴史において幾多の名ブランドは、どんな困難(オイルショックなど)があろうとも、クルマ自体の魅力を最大限に切り開いてその文化を発達させてきました。もしレクサスがそれらのブランドと肩を並べるという大志を抱いているというなら、アパレルや家電製品のように主体性を失うことがあってはいけないと思います。



   ↓団塊ジュニア世代を席巻したガンダムを連想させるクルマも多いですね。ホンダ・スバル・メルセデス・・・
  

2013年9月5日木曜日

レクサスIS350の存在を消し去る輸入車メディア・・・

  これまで「オートカー」や「ルボラン」などの雑誌からは、完全にバカにされていたレクサスISですが、フルモデルチェンジを期に突如としてドイツセダンの最大のライバル車として引っ張りだこになりました・・・。先代はレクサスのFRのボトムエンドのクルマというだけの存在で、同世代の日本車にすら完全に遅れをとっている始末で、ドイツ車びいきの評論家達はこれ見よがしに批判と嘲笑をぶつけました。まあある意味では引っ張りだこだったのかもしれません。

  先代ISの車体剛性の低さを執拗に叩くことで、「ドイツ車>日本車」がクルマの常識であるかのように流布されました。ただ真相は先代ISはE90BMW3シリーズと比べて貧弱なのは確かでしたが、E90を大きく上回るV36スカイラインやE90とほぼ同水準のGHアテンザを考えると現実は「日本車>ドイツ車」のほうが適切だったのです。これもアホメディアのプロパガンダの弊害なのですが、スカイラインとアテンザはドイツ車とは比べないというお約束すらあったようです。結局、北米の衝突実験で車体剛性に関しては「日本車>ドイツ車」が証明されましたが・・・。

  無念なことに、日本車のイメージを大きく失墜させてしまったレクサスISは捲土重来とばかりに、スカイライン級の剛性を目指した新型ISとして登場しました。日本メーカーの開発は昔からインテグラル=アーキテクチャとして世界の他のメーカーと比べて、特に鋼板開発に強いと言われています。その日本メーカーのボスであるトヨタがその気になれば、世界のどこよりも「剛性がある」車体を作ることなんて朝飯前です。もちろん「軽く」もできますし「安く」もできます。BMWなんぞは所詮はエンジン屋であり、鋼鈑に関してはトヨタや日産が圧倒的にノウハウを持っています。

  一足先に登場した現行3シリーズのF30をいまだに絶賛する人は少なくなってきたようですが、このクルマはV36スカイラインや新型レクサスISから見れば取るに足らないクルマです。実際にこのクルマが評価されているのは、悲しいことに日本の御用ジャーナリスト達が主催するRJCのCOTYのインポート部門で受賞した時しかないのです。ヨーロッパも北米も世界も完全に圏外と考えているクルマなのに、日本やアジアのジャーナリストだけがやたらと執心している盲目っぷりがイタすぎます。

  それはともかく、3シリーズやCクラスのようにフロントにエンジンを搭載していながら、「ストラット」だの「3リンク」だの大衆車じみたサスを使っている段階でスカイラインやISの敵じゃないだろと思ってしまいます。最大斜度4パーミリ以下で直線ばかりのアウトバーンを疾駆するならそれでも構わないのでしょうが、そんなコストダウンの産物を有り難がっているのは日本とアジアだけです。アメリカ人やドイツ人にしてみたら3シリーズやCクラスは普通のクルマです。日本人ジャーナリストがベンツのエンジニアにCクラスはなんでこんなに五月蝿いのかと訊いたら、怪訝な顔をされたそうですが、ドイツ人からしてみたらCクラスを崇めて高級車の性能を求めるアジア人ジャーナリストの知性の低さに愕然としたのだと思います。

  さて新型レクサスISの前評判の良さも手伝って、各誌ともにドル箱企画と言える「3シリVSレクサスIS」「CクラスVSレクサスIS」というドストレートな特集を組んでいます。ただシャシーもサスもブレーキも燃費性能も完全にレクサスISが上回ってしまい、ドイツ勢が唯一勝てる点が「安さ」だけという10年前には考えられなかった構図ができてしまいました。これではどうやっても主力購読層のドイツ車ユーザーの溜飲を下げることができないので、各誌とも「禁じ手」を次々と繰り出してきます。まず爆笑噴飯ものだったのが、「レクサスISはまんべんなく高得点な作りをしていて面白くない」という結びです。ちょっとばかりサスが安っぽくて直4で車内にロードノイズが入ってくる方が良いそうです。そういった欠点を持ち合わせる3やCが良いのならいっそのことスイフトスポーツとでも比べたらどうでしょうか?

  次に面白かったのが、絶対にレクサスIS350を登場させない作戦です。もちろん350の圧倒的な戦闘力でドイツ車を瞬殺してしまい弁護不能な状況を招くからです。「なんだかんだいって300hが一番面白かった」という撹乱発言をしてまで、350を比較対象として登場させないことを、無理矢理肯定しようとしているのが強烈でした。まあドイツメーカーはドイツのCO2削減政策に遵守して自主規制しながらクルマ作ってるのだから、3.5Lのようなアメリカ市場しか見てないようなグレードは検討に値しないのかもしれません。それならAMG55やM3もフェアに消すべきではないでしょうか。まあV8積んでるのにストラットを使うという、ジャガーやアストンマーティンでは絶対にしないような暴挙のクルマなんてそもそも問題外なのですけど・・・。


↓このシリーズにしては充実の執筆陣で、クルマ全般の技術論が豊富で為になりました・・・
  

  

  

2013年8月14日水曜日

ISはまだまだ本領発揮じゃない・・・

  時代は完全に次世代のエコカーへと移行していると見せかけて、世界の主要自動車グループはいわゆるアメリカンマッスルカー的な「スーパースポーツセダン」の開発に熱心だったりする。しかもその中心にいるのが、エコで堅実なイメージがあるトヨタとVWのプレミアムブランドである、レクサスとアウディだったりする。

  アメリカのスペシャリティカーは今なおV8が主流だ。400万円以下で新車で買えるV8搭載車があるというのも驚きで、アメリカのクルマ文化は非常に奥深い。アメリカのV8セダンはビッグ3からそれぞれ比較的廉価で発売されている。GMグループからは「シボレーカマロ」と「キャデラックCTS-V」の2グレード。どちらも近年の進化が著しくアメリカから世界へと今後飛び出していく勢いを感じる。クライスラーはダッジとSRTの2ブランドから「チャージャー」と「300」が発売されている。GMよりもさらに廉価ということもあり日本でもアメリカ車好きを中心に浸透しつつある。フォードはV8モデルの拡散にはやや消極的なようで、マスタングシリーズのみに採用している。V8はスポーツ仕様と割り切っているようで、乗用車ベースのスペシャリティカーながら、純正スポーツカー不在のブランドを背負って立つ性能を持っていて、コルベットやバイパーと互角という圧倒的な運動性能が魅力だ。

  北米市場にはさらに、これらとは価格帯がやや異なるが、V8やV12(W12)を搭載した欧州の最上級クラスのセダンも輸入されている。マセラティ、ベントレー、ロールス、アストンマーティンに加えて、マイバッハ廃止で最上級モデルをさらにパワーアップしているメルセデスは元々北米でのステイタスが高い。ここに殴り込みをかけているのが、VWグループのアウディで従来のイメージを変えてしまうような12気筒モデルを加えた最上級セダンA8を投入している。このクルマはすでに中国では他のブランドより一歩先んじた存在になっているのだとか・・・。欧州では未曾有のクルマ不況もあり、各社ともこの北米の最上級車市場で勝負をかけている姿勢が色濃くでている。

  スポーティなアメリカ勢とハイソサイエティの欧州勢に加えて、欧州発のスポーティモデルとしてBMWのMシリーズとポルシェのパナメーラも北米を主眼に開発されている。これら海外勢が主導権を握る北米の高級車市場で、V8の投入が事実上不可能なインフィニティ(日産)とアキュラ(ホンダ)は現状ではその下のサブプレミアム市場に甘んじている。日本勢で唯一これらの最上級プレミアムクラスに参戦しているのがレクサスだ。フラッグシップのLSに搭載されているV8+HVで400psを絞り出す妥協のないユニットは十分に競争力がある。すでに単独のブランドとして販売台数ではメルセデスやBMWを射程圏内に収めており、日本発プレミアムブランドとしては後発だったにも関わらず、異例の躍進を遂げていて、現在では断トツで先頭を走っている。

  レクサスは現在ラグジュアリーなV8+HVに加えて、スポーティなV8ユニットを使う次世代型Fシリーズを準備しているようだ。従来からもIS-Fがあったが、シャシーがそのパワーに十分に対応しきれず、電子制御デバイスが大幅に介入される設定で、ほぼ直線の道路以外ではハンドルを切れば、空転が発生して「即フルカット」される仕様だった。現行のGS・ISのシャシーは全方向での剛性アップでV8(5L)の性能をより生かせるクルマとして登場していて、新型シャシー投入の主眼は現行IS-Fの難点を大幅に改善した新しいFシリーズでさらなるブランド力向上だと思われる。この次世代のFシリーズをGSとISのクーペ版(RC)に設定するらしい。

  現行GS350Fスポの重量が1690kgなので、これをベースにV8に載せ変えれば、特別な軽量設計がされない限り1700kg台後半になるだろう。IS350Fスポは1640kgなので、こちらもV8なら1700kg突破が確実だが、専用のクーペボディでトヨタが全力で軽量化に取り組めば、先代IS-F並みの1690kgに抑えることもできるのではないかという気がする。この30~40kgの軽量化がどれほどセールスに影響するかはやや不明だが、顧客はV8のパワー感そのものに投資するのだと考えれば、軽量化こそがその魅了を最大限高める要素なのは間違いない。

  乗用車ベースのクルマにフェラーリ458イタリア(V8で1380kg)やマクラーレンMP4(V8で1440kg)と同等のパワーウエイトレシオを求めるのはさすがに酷だ。しかしこれらのスーパースポーツと、1900kg以上の重量がありもはや時代遅れと揶揄されるM5やE63AMGとの間の領域でどれだけバランス良くクルマを仕上げられるかが、今後のV8プレミアムスポーツセダンの存在価値だと思われる。ちょっと大雑把だが4.7mクラスの3BOX車ならV8を積んで1800kg以下で80点、1700kg以下で90点、1600kg以下なら100点満点といったところだろうか。

  現行モデルで採点すると、1800kg以下がC63AMG、1700kg以下がM3(E92)とIS-Fとフォードマスタングの3台、1600kg以下はいない。マセラティ、ポルシェ、アウディ(S6~8、RS5)では該当なしだった。1700kg以下なら理論的にはアストンマーティンV8ヴァンテージに匹敵する運動性能ということになる。レクサスがIS-FでベンチマークしたM3の次期モデルは派生するM4も含めて直6ターボに移行するので、Fシリーズの当面のライバルはマスタングとC63AMGになるようだ。BMWはV8軽量化競争で白旗を挙げてしまったが、トヨタが果たしてどれだけ最新の軽量化技術を投入してくるのか注目だ。


2013年7月21日日曜日

両眼が開いた新型レクサスIS350Fスポーツ


   2005年のレクサスの日本開業いらい最も売れたクルマがレクサスISだ。しかしこの初代レクサスISはクルマとしての評価は残念ながら散々なものであった。レクサスという話題性と価格帯だけで人気になってしまうトヨタのマーケティングも素晴らしいが、同時にクルマの完成度が今ひとつだったこともあり、レクサスの伸び悩みの原因として叩かれるクルマにもなってしまった。

  初代ISの上級モデルにはトヨタ渾身の3.5Lエンジンが積まれさらにV8エンジンが積まれたモデルも作られた。3,5LV6エンジンは高級車のエンジンとしては他のブランドを圧倒する抜群のスポーツエンジンで、搭載モデルはどれも0~100km/h5秒代で駆け抜けるスポーツカー並みの実力を持っている。ディーゼルターボの加速が4Lのガソリンエンジンに匹敵すると言われている、マツダのアテンザディーゼルなど寄せ付けない速さだ。

  理論値ではポルシェの水平6気筒を完全に上回るパワーを持っているエンジンだが、悲しいことにトヨタの旧型のプラトフォームではその性能を十分に発揮できなかった。もちろん他のメーカーよりもカスタムパーツが豊富なトヨタ&レクサスなのでベース車としてはこの上ない好素材で、足回りの強化を図ればそれなりに実力は引き出せるようだが、ノーマル状態では、マークXもクラウンも初代ISもお世辞にもバランスがとれているとは言えない。

  このエンジンをしっかりと使えるクルマとして登場したのが現行GSから導入された新しいプラットフォームだ。2013年版の「間違いだらけのクルマ選び」でこの現行GSは絶賛されているが、市場の反応は今ひとつであった。このGSにはどうやら力が入り過ぎてしまったようだ。いろいろなことが盛り込まれ過ぎていて(250の追加・450hのトップエンド化など)、クルマの全体的な印象がぼやけてしまっている。ただ先代から用意されている3.5Lのグレードで比較するならその性能の進化の度合いは話題の新型アテンザなどよりも断然に上と言ってもいい。やっとトヨタの傑作エンジンに見合うだけのシャシーと足回りを標準で備えたクルマが登場した。

  そのシャシーと足回りを受け継ぎ、さらにボディデザインまで一新していよいよ無欠の「究極スポーツセダン」として発売されたのがIS350Fスポーツだ。GSクラスだとドイツ勢はV8ターボというアウトバーン専用スペックのクルマを用意しているが、このISのクラスになると上級車でも大抵は6気筒エンジンが主体だ。

  「乗用車改造スポーツカー」というドイツと日本が完全に他をリードしたジャンルにおいて、2000年代のスカイラインGTRやアリストターボの廃止以来、日本車はドイツ車に遅れを取っていた。しかしこのGSISの出現によって再び覇権を奪回するのではないかと思う。BMWの新型M3やM4は直6ターボで登場するようだが、IS350Fスポならこの1000万円クラスのクルマと互角以上の性能だ。いよいよレクサスが世界の頂点への確実な一歩を踏み出した。